“50代の落書き”「フィフティズ・グラフィティ」のコンセプト

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2013年10月

2013年10月26日 (土)

「川本真琴」天才説   その14 「願いがかわるまでに」がかえるもの

S0276032

あの「音楽の世界へようこそ」以降、ほぼ年1作ペースで新作CD(ミニアルバム?)を発表し、昨今はツアーやアイドルへの楽曲提供など、「積極的な」ペースで活動されている川本さんですが、今作はいつも以上に驚かされました!その方向性と受ける印象の違いに・・・

 
 
 

「音楽の世界へようこそ」以降、というよりもっとさかのぼって2006年の「mihomihomakoto」や「タイガーフェイクファ 山羊王のテーマ」のあたりから、川本さんの作品からはSONY時代の青春的切なさや苦しさよりも、一皮むけたおおらかさ、言い換えれば「幸せ感」を強く感じるようになったと今まで書いてきました。その「幸せ感」は表面的な表現よりは、つらい雌伏の時期を乗り越えて掴んだ、音楽と素直に向き合える充実感から来るものが一番とは感じます。ただ確かにちょっと懐かしテイストかつシンプルなメロディーとアレンジ(例えば「アイラブユー」のフォーク調)を使っての手法が担う部分もあることは否定はできないと思います。その辺は「フェアリー・・・」や「・・・幽霊」でも(形を変えて十分な変化はさせているとはいうものの)継承されていると感じています。

 
 

ところが本作を最初に聞いた時に感じたのは近作にあふれる懐かし調や自然主義的視点、ミニマルでトラディショナルな音作りとはむしろ対極な、「現代的、都会的に洗練されたおしゃれな」作詞作曲編曲そして歌唱でありました。CD入手前に川本さんのHPの記事で予習(カンニング?)した折にも、聞く直前に目を通したCD付属の豊田道倫さんのライナーノーツにも、本作は「ネオソウル」だと書かれておりますが、ねおそうる自体を分かっていない自分にも、「あ、こういう感じの音ね」と何となく分かるような直球の曲作りにはなっているようでした。ただあまりにも大きくそちらに振ったように感じたため、いつも以上に驚いたのだと思います。
 
 
 
もう一つのとまどいはこれも今までにない「耳あたりの良さ」(変な表現ですが)です。「音楽の・・・」を初めて聞いた時には、特に最初の出だし数音から「重量感」とも言えるような何とも言えない重みから来る期待感、わくわく感を感じたのですが、本作はそういう「引っかかり」をほとんど感じず、本当にサラッと全5曲を聞けてしまいました。で、正直拍子抜けしてしまい、繰り返し聞いたのですが、何回聞いてもどこかですうっと集中力が抜けてしまうような不思議な感覚に陥りました。
 
 
 
これはどういう事なのかちょっと悩みました。ひょっとしたら本作はいまいちの出来なのか?心に訴えるものがない凡作なのか・・・
 
 

ところが、更に聞き込むうちに(正確には聞き流すうちに)、少し正体が見えてきた気がします。キーワードはまずはやはり近作に共通する「幸せ感」。そして作品世界を今まで以上に広げる、客観的な表現による新たなアプローチ。この2つの融合により切り開かれ始めた「
次世代川本流」のスタートがここにあるのかなと。
 
 
 
今年川本さんはアイドルさんや声優さんへの(つまり他者への)楽曲提供という新境地に足を踏み出しています。これの意味するものは、曲作りについて、より客観性を上げる必要があったという事だと思います。SONY時代から基本的に自分の為に曲作りをしてきた川本さんにとって、「音楽の・・・」以降がいくら新しい川本流といってもそれは自分自身という「結界」の中の変化と思います。ところが他人への曲提供となれば、少なくとも相手方の世界観を客観的に表現する必要が出てくるわけで、今までとは全く違うアプローチが必要となってきたのだと推測します。そしてその経験のご自身向け作品へのフィードバックが、最近の、若しくはこれまでの「川本真琴」イメージ(ふわりキャラとか自然志向とかミニマル&オーセンティック路線とか)を覆すような、大人で都会的な詩の世界や音作りに見事に結実したのではないかと思います。つまり、活動の幅を広げたことが自身の作品の世界観を拡げ、スケールアップにつながったと考えられるわけです。
 
 
 
一方、さらっと聞き流してしまえると思う割には、聞いた後の感覚が何ともさわやかというか、気持ちが良いのです。何度聞いてもそうですし、それ以上に「何度でも通しで聴きたくなる」のです。これは不思議な感覚です。普通だったらサラッとしすぎの作品ならもういいやとすぐに飽きちゃいそうなのですが、繰り返し何度でも何度でも聞いてしまえる気持ち良さ。単に川本さんご贔屓では語れない「気持ち良さ」。これ結局はいつもの「幸せ感」から来ているんだと気づきました。タイトルチューンの「願いがかわるまでに」は勿論幸せ感直球ど真ん中狙いで分かりやすいですが、実験的な「fish」も、何よりカッコつけ系のネオソウル3曲も、実は「新・川本流」幸せ感をしっかり継承したうえで、さらに新境地を模索する新しい試みなんだなと気づいたわけです。
 
 
 
 
「川本真琴」の天才性は、結局のところこのように「今ある自己を破壊(若しくは改革)」し続ける、「かえてゆく能力」なのかもしれません。SONY時代からのリボーンは大変な年月と葛藤があったと思いますが、結果として「幸せ感」あふれる新生川本真琴の世界を新たに構築し、進化し続けて来ました。本作はその「幸せ感」はそのままに、それを表現するために長い時間をかけて築き上げた新・川本流の「スタイル」を、再び破壊し再構築するプロセスに入ったことを私たちに告知してくれた作品なのかもしれません。本作は5曲入りというボリュウムですが、これを最初のステップとするならば、いつか姿を現す(かも知れない)フルアルバムでは、「音楽の・・・」とはまた全く違うアプローチで完成した「新・音楽の世界」を聞かせてくれるのかもしれません。
 
 
 
 
 
本作はおまけのDVDも写真集もついてません。久々に音楽CDのみの作品。こんなところにも、近作以上に「新しい音を聞いてほしい!」という川本さんの強いメッセージを感じる気がするのは私だけでしょうか・・・

あの

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