「東宝特撮映画DVDコレクション」第4弾 「海底軍艦」 大人の、大人による、大人のための特撮映画! (後編)
特撮についてもメカ設定についても見どころ満載の「海底軍艦」ですが、むしろこの手の映画としては異例なくらい、いわゆる本編部分、俳優陣の熱演が印象的な作品だとおもいます。そして特におじさん連がね、カッコいいんですね、これが!
男優陣の顔ぶれを見ると、毎度おなじみの、という感じです。高島忠雄さん、藤木悠さんのコンビに小泉博さんがからんで、例によって軽妙な狂言回しで物語を進めてくれます。今回は敵役の佐原健二さんは、本当に一癖も二癖もという感じのいやらしさで、モスゴジ以上の存在感。モスゴジコンビの田島義文さんは堅物の軍人を好演し、天本英世さんにいたっては、当時38歳(!)で、ムウの長老(!)役に見事に収まってます。軍人やらせたらピカ一の藤田進さんは防衛庁幹部など、脇役陣も適材適所、それぞれのポジションで力の入った演技を見せてくれています。
基本的に、東宝特撮映画での本多猪四郎演出は、特撮部とのバランスを考慮してか、当時の邦画のトレンドなのか、比較的抑え目の、良い意味さらりとした感覚が持ち味とおもっていました。ですがこの作品については、ドラマ部分が長めという事もあるかもしれませんが、いつになく熱っぽい印象です。
その最たるものが、元技術少将、楠見役の上原謙さんと、事実上の主役である神宮寺大佐役、田崎潤さんの熱演であるとおもいます。
上原謙さんは、いわずと知れた加山雄三さんのお父さんであり、若き日は映画界を代表する2枚目だったそうで、うちのお袋あたりでも、上原謙は素敵だったのよと、何度となく聞かされた覚えがあります。この映画のときは50代半ばのナイスミドルですが、元軍人という感じのビシッとした身のこなしと、戦後20年を過ごした平和を感じさせる、穏やかで洗練された雰囲気を見事に両立させていて、本当にカッコいいとおもいます。
そして、やはりこの映画は、この男、田崎潤さんの「神宮寺八郎大佐」のものですね!全体、軍人役が似合う方ですが、この作品ではいつも以上に見事に、「時代錯誤」といえるほど骨の髄からの日本国海軍士官になりきっています。そしてそれだけではなく、娘への思いとそれを素直に表現できないもどかしさ、自らの信念と新しい使命の間での激しい葛藤、敵皇帝への敬意の念等、揺れ動く心を見事に演じきっているとおもいます。特に、夜の海岸で娘から厳しい言葉を投げられ、深い悩みにさいなまれるシーンなど、これはもはや「怪獣映画」のノリではなく、立派な一本の人間ドラマとして成り立つレベルだとおもいます。
こういう演出姿勢だからこそ、小林哲子さんの見事な「ムウ帝国皇帝陛下」も、ちょっと堅めな藤山陽子さんの「神宮寺真琴」(娘役)も、他作品のヒロイン以上の存在感に感じるのかもしれません。
なぜだろうと考えるに、この映画は特撮といっても、「怪獣映画」というよりは東宝特撮のもう一つの十八番、「戦記物映画」の色合いが濃いためかも知れません。必然的にターゲットは大人という事になり、また、当時の風潮としても、戦記物にはリアルで真摯な取り組みが求められたのでしょう。
ムウ帝国の表現については、「モスラ」のインファント島描写などにも通じる、当時の妙な世界観が感じられて、今見るとチョットね、というところも正直あります。轟天号との戦闘シーンも、もう少し長くても、ともね。しかし全体としては、戦記物の良さと空想科学冒険物の良さが見事に融合した、非常にユニークなポジションの映画だと感じます。そして、印象としては轟天号という、超強力なキャラクターに目が行きがちではありますが、その実は、ジャンルを超え一本の映画としても相当に高い完成度をもつ、「日本映画」の傑作の一つ、と言って良いとおもいます。
ついつい力が入っちゃいましたが、次回配本は「モスラ」(昭和36年版)という事で、またまた楽しみです!「海底軍艦」が東宝特撮映画最高の「お気に入り」とすると、こちらはまさに「最高傑作」と考えていますのでね!
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